バイクを高く売るコツ


免許取得のために通う教習所。そこで初めてまたがるバイクに、緊張と興奮を覚えた方は多いでしょう。教官の指導のもと、一本橋やスラローム、クランクといった課題をクリアしていく中で、いつしか「教習車の乗りやすさ」に気づくことはありませんか。「免許を取ったら、教習車と同じバイクに乗りたい」と考える人もいるかもしれません。
実は、教習車として採用されているバイクには、ライダーを育てるための「乗りやすさ」が詰まっているからです。数あるバイクの中から選ばれたエリートとも言える教習車。その車種や特徴、そして実際に市場に出回る「教習車上がり」のバイク事情について解説していきます。

教習所のバイクが乗りやすい理由


教習生が最初に乗るバイクには、初心者が安全に技術を習得するための様々な工夫と理由が存在します。その「乗りやすさ」に繋がる理由を紹介します。

エンストしにくいエンジン特性

教習所内のコースは、狭いクランクや一本橋など、低速走行がメインとなります。そのため、教習車は低回転域でのトルク(粘り強さ)が重視されたセッティングになっていることが多いのが特徴。
発進時のエンストを防ぎ、アイドリング付近の回転数でも進んでくれる力強さがあります。これがあるおかげで、半クラッチや繊細なアクセルワークに慣れていない段階でも、バイクをコントロールしやすいのです。市販車の中には高回転型で発進に気を使うモデルもありますが、教習車はまさに「優等生」のようなエンジン特性を持っています。

操作しやすいライディングポジション

教習車独特のアップハンドル仕様も見逃せません。前傾姿勢がきつくなく、上体が起きたリラックスしたライディングポジションを取れるため、視野が広く確保できます。
これにより、周囲の状況確認やバランス修正がしやすく、結果として「乗りやすい」と感じる要因に。また、足つき性を良くするためにシート高が低く調整されていたり、形状がスリムになっていたりすることも、安心感を生む大きなポイントです。

安定感のある大型バンパー

教習車と市販車の最大の違い、それは車体を取り囲むように装着された大きなバンパー(エンジンガード)と、前後に装備された表示ランプ類です。
特にバンパーの存在は絶大。転倒時の車体ダメージを防ぐだけでなく、ライダーの足を挟まないための安全空間を確保する役割も果たしています。この「倒しても大丈夫」という心理的な安心感が、無駄な力を抜き、スムーズな操作へと繋がっているのです。

プロによる完璧な整備

車種の性能もさることながら、乗りやすさを支えている大きな要素がメンテナンスです。教習車は毎日、始業前点検が行われ、定期的にプロの整備士によるメンテナンスを受けています。
チェーンの張り具合、クラッチの遊び、タイヤの空気圧、ブレーキの効き。これらが常にベストな状態に保たれているからこそ、バイク本来の性能が発揮され、素直な挙動をしてくれるのです。中古車や整備不良のバイクに乗ると分かりますが、「整備されたバイク」というだけで、その操作性は劇的に向上します。教習生は知らず知らずのうちに、最高コンディションのバイクで練習していることになります。

教習所で採用されている主な車種


では、実際に教習所ではどのようなバイクが採用されているのでしょうか。代表的なモデルを紹介します。もし「あのバイクが欲しい」と考えているなら、まずはモデル名を把握することから始めましょう。

【普通二輪】ホンダCB400SUPERFOUR

日本の教習車といえばこれ、と言っても過言ではない名車。通称「スーフォア」。長きにわたり教習車のスタンダードとして君臨してきました。
直列4気筒エンジンの滑らかな吹け上がりと、VTEC(可変バルブタイミング機構)によるパワフルな走り。低速から高速まで扱いやすく、素直なハンドリングは「バイクの教科書」とも評されます。
残念ながら2022年に生産終了となりましたが、現在でも多くの教習所で現役稼働中。市販車としても絶大な人気を誇り、生産終了以降、中古車価格が高騰していることでも知られています。

【普通二輪】ホンダNX400

CB400SFの生産終了に伴い、新たな教習車として導入が進んでいるのが400ccクラスの新型モデルたちです。中でも注目されているのが、ホンダのクロスオーバーモデル「NX400(旧400X)」。
このモデルは2気筒エンジンを採用しており、車体が軽く取り回しが良いのが特徴。特に女性や小柄なライダーにとっては、重厚なCB400SFよりも扱いやすいと感じる場面があるかもしれません。アドベンチャースタイルの視界の良さも相まって、これからのスタンダードになっていく可能性を秘めたモデルです。

【大型二輪】ホンダNC750L

大型二輪教習の主役として活躍しているのが「NC750L」。このモデルは、教習車仕様として専用開発された経緯を持つ特殊なバイクでもあります(ベースは市販車のNC750S/X)。
特筆すべきは圧倒的な低重心設計。燃料タンクがシート下に配置されているため重心が低く、750ccという排気量を感じさせないほどの軽快な取り回しを実現しています。エンジンは低回転トルクが太く、エンストしにくい特性を持つため、大型バイク特有の「重さ・パワーへの恐怖心」を払拭してくれます。大型免許取得のハードルを下げた功労者とも言える一台。

【普通二輪・大型二輪】その他の採用メーカー

ホンダ車が圧倒的なシェアを誇りますが、他メーカーのバイクを採用している教習所もあります。
例えばヤマハの「MT-03」や「MT-09」は、ストリートファイター系のネイキッドスタイルで、軽量かつ軽快な走りが特徴。スズキの「GLADIUS400」はVツインエンジン搭載でスリムな車体を持ち、足つき性の良さから採用されることがあります。また、大型二輪教習の一部で、ハーレーダビッドソン(スポーツスターなど)に乗れるプランを用意している教習所もあり、多様化が進んでいます。

教習所のバイクは中古市場に出回るのか


教習所での役目を終えたバイクたちは、その後どうなるのでしょうか。「あの乗りやすさをもう一度味わいたい」と、教習車上がり(教習落ち)の車両を探す方もいるかもしれません。ここでは、教習車の中古市場について解説します。

査定額は低くなる傾向に

教習車として使われていたバイクは、当然ながら過酷な環境で使用されています。走行距離自体はそれほど伸びていなくても、長時間のアイドリングや低速走行による熱負荷、半クラッチの多用による消耗、そして数え切れないほどの転倒によるフレームへのストレスなどが蓄積しています。
そのため、一般的な中古車市場における買取査定額は、どうしても低くなる傾向にあります。また、教習車仕様としてデチューン(出力抑制)されていたり、特殊な配線加工がされていたりするため、一般公道仕様に戻すのに手間がかかる点も、評価を下げる要因となります。

状態が良いものは安価な中古車として再販も

とはいえ、すべての教習車がスクラップになるわけではありません。プロによる整備を定期的に受けていたため、エンジン内部のコンディションが意外と良好な個体も存在します。
そうした状態の良い車両は、買取業者によってバンパーなどの教習装備が取り外され、保安部品を公道仕様に整備した上で、安価な中古車として再販されることがあります。「見た目は傷だらけでも、中身はしっかりしている練習用バイク」として、初めての一台やジムカーナ練習用としての需要があるのです。

状態が悪くても部品取り車としての需要も

転倒ダメージが大きく、車両として再販するのが難しい場合でも、部品取り車としての価値が残ります。特にCB400SFのような絶版人気車であれば、エンジン単体や外装パーツ、足回り部品だけでも高値で取引されるケースがあります。
もし市場で「教習車上がり」とされる車両を見つけた場合は、価格の安さに惹かれるかもしれませんが、クラッチやギアの消耗度合い、フレームの歪みなどを慎重に見極める必要があります。信頼できるショップでしっかりと整備された車両を選ぶことが、購入後のトラブルを避ける鍵となるでしょう。

まとめ


教習所のバイクが乗りやすいのには、明確な理由があります。それは、ライダーを育てるために設計された車体構成、扱いやすいエンジン特性、そしてプロによる徹底した整備の賜物です。
教習車と同じ車種を愛車に選ぶことは、慣れ親しんだ操作感で安全にバイクライフをスタートできるという点で、非常に賢い選択肢の一つです。特に「CB400SF」や「NC750L」といった名車たちは、教習車という枠を超えて、多くのライダーに愛される普遍的な魅力を持っています。
ただし、実際に教習車として使われていた中古車両を購入する場合は、その特殊な経歴を理解し、リスクとメリットを天秤にかけることが大切です。