日本の都道府県の中で北海道に次ぐ広大な面積を誇る岩手県。その大地には、ダイナミックなリアス式海岸が続く三陸沿岸、雄大な山々が連なる奥羽・北上山地、そして宮沢賢治が愛した牧歌的な風景など、ライダーの心を揺さぶる多様な景色が広がっています。厳しい自然と共生してきた人々の歴史や文化も色濃く残り、訪れる場所に異なる物語を感じさせてくれます。この記事では、そんな広大で魅力あふれる岩手県の中から、バイクで走ってこそ、その真価を体感できるツーリングスポットを10箇所厳選してご紹介します。次の旅では、みちのくの大地が織りなす絶景と感動を、愛車と共に探しに行きませんか?
八幡平アスピーテライン
岩手と秋田の県境にまたがる八幡平の山岳地帯を貫く「八幡平アスピーテライン」は、北東北を代表する絶景山岳ロードであり、多くのライダーが憧れる道です。全長約27kmのルートは、ダイナミックな自然の中を駆け抜ける爽快感に満ち溢れています。この道のハイライトは、なんといっても春の開通直後に現れる「雪の回廊」。道路の両側に数メートルの雪の壁がそそり立つ中をバイクで走り抜ける体験は、非日常的で感動的です。夏は鮮やかな緑、秋には山全体が燃えるような紅葉に染まり、四季折々の美しい景色が楽しめます。標高が高く、カーブも連続するため、走りごたえも十分。頂上付近の駐車場からは、岩手山や周辺の山々、沼などが織りなす雄大なパノラマを一望できます。ただし、冬季は閉鎖されるため、訪問時期の確認は必須です。
浄土ヶ浜(宮古市)
三陸復興国立公園の中核をなす景勝地「浄土ヶ浜」は、岩手県の海岸線を代表する絶景スポットです。鋭く尖った白い流紋岩が林立し、穏やかで透明度の高いエメラルドグリーンの入江に浮かぶ様は、まさに「さながら極楽浄土のごとし」と称された美しさ。バイクを駐車場に停め、遊歩道を歩いて浜辺に下りれば、その神々しいまでの景観に息をのむことでしょう。青い海と白い岩、そして緑の松のコントラストは、どこを切り取っても絵になります。周辺には、入り組んだ海岸線を巡る遊覧船や、海の幸を味わえる食事処もあります。三陸の海岸線を走る国道45号線からのアクセスも良く、沿岸ツーリングの際には必ず立ち寄りたい、岩手の宝とも言える場所です。
龍泉洞(岩泉町)
日本三大鍾乳洞の一つに数えられる「龍泉洞」は、その神秘的な美しさで知られる洞窟です。洞内の総延長は5,000m以上とも言われ、現在も調査が続けられています。見学コースでは、長い年月をかけて形成された鍾乳石の数々を間近に見ることができますが、何と言っても圧巻なのは、地底湖の存在です。世界有数の透明度を誇るドラゴンブルーの湖水は、ライトアップされて幻想的な輝きを放ち、その吸い込まれるような青さは見る者の心を捉えて離しません。洞内は年間を通じて気温が10℃前後に保たれており、夏は涼しく、冬は暖かく感じられます。ツーリングで火照った体や冷えた体を休めるのにも最適。山深い場所にありますが、そこへ至る道程もまた、岩手の自然を感じるツーリングの一部となるでしょう。
平泉(中尊寺・毛越寺)
岩手県南部に位置する平泉は、平安時代末期に奥州藤原氏三代が栄華を極めた地であり、その文化遺産はユネスコの世界文化遺産に登録されています。ツーリングでこの地を訪れ、歴史の重みに触れるのも一興です。「中尊寺」の金色堂は、その名の通り内外が金箔で覆われた豪華絢爛な阿弥陀堂で、奥州藤原氏の権勢と浄土思想を今に伝えています。「毛越寺」では、大泉が池を中心とした優美な浄土庭園が広がっており、往時の姿を偲びながら静かな時間を過ごすことができます。バイクを駐車場に停め、杉木立の参道を歩けば、日常の喧騒を忘れ、心が洗われるような感覚になるでしょう。歴史好き、仏像好きのライダーならずとも、一度は訪れたい日本の宝です。
遠野(とおの)
民俗学者・柳田國男の「遠野物語」の舞台として知られる遠野市は、日本の原風景とも言える、どこか懐かしい里山の風景が広がるエリアです。カッパやザシキワラシといった不思議な伝承が今なお息づいており、町全体が独特の雰囲気に包まれています。カッパが出たとされる「カッパ淵」や、昔ながらの農家の暮らしを再現した「デンデラ野」、そして昔話を語り部から聞くことができる「遠野昔話村」など、物語の世界を巡るツーリングが楽しめます。派手な観光地ではありませんが、のどかな田園地帯や里山をバイクでゆっくりと流し、日本の心のふるさとに触れる旅は、きっと忘れられない思い出となるでしょう。
岩手山と焼走り熔岩流(八幡平市)
南部富士の愛称で親しまれる「岩手山」は、その優美な姿で岩手の風景を象徴する存在です。その麓を走るルートは、どこからでも雄大な岩手山を望むことができ、開放感あふれるツーリングが楽しめます。特に訪れたいのが、北東麓に広がる「焼走り熔岩流」です。約280年前に岩手山が噴火した際に流れ出た溶岩が、冷え固まってできた広大な黒い大地は、生命の気配がほとんどない荒涼とした風景。緑豊かな周辺の自然とのコントラストが強烈な印象を与えます。国の特別天然記念物にも指定されており、その上を歩ける遊歩道も整備されています。バイクと共にこのダイナミックな地球の営みの跡に立てば、自然の力の大きさを肌で感じることができるでしょう。
小岩井農場(雫石町)
雄大な岩手山の南麓に広がる「小岩井農場」は、130年以上の歴史を持つ日本最大級の民間総合農場です。広大な草地に立つ一本桜や、歴史を感じさせる牛舎群、そしてどこまでも続く牧草地といった牧歌的な風景は、訪れるだけで心が和みます。農場内では、新鮮な牛乳から作られるソフトクリームやジェラート、チーズなどの乳製品を味わうことができ、ツーリング途中の休憩やグルメスポットとして最適です。また、トラクターバスに乗って非公開の生産現場を巡るツアーなども人気。バイクを停めて、のんびりとした時間を過ごすのにぴったりの場所です。周辺の道路も交通量が少なく、気持ちの良い田園ツーリングが楽しめます。
北山崎(下閉伊郡田野畑村)
三陸海岸の断崖美の集大成とも言えるのが、「海のアルプス」の異名を持つ「北山崎」です。高さ200mにも及ぶ断崖絶壁が、約8kmにわたって連なる様はまさに圧巻の一言。展望台からは、眼下に広がる紺碧の海と、そこから突き出すようにそそり立つ奇岩、そして荒々しい海岸線のダイナミックなパノラマを一望できます。展望台から海岸まで下りていく遊歩道もあり、下から見上げる断崖の迫力もまた格別です。また、断崖を海から眺める観光船も運航されており、違った角度からその絶景を楽しむこともできます。三陸海岸を縦断する国道45号線からのアクセスとなり、道中の海岸線ツーリングと合わせて、この雄大な自然の造形美をぜひ体感してください。
遠野馬の里(遠野市)
遠野は「遠野物語」だけでなく、かつては馬産地としても栄えた歴史を持ちます。その文化を今に伝えるのが「遠野馬の里」です。ここでは、かつて農耕や運搬に活躍した南部馬(寒立馬)の系譜を引く馬たちが飼育されており、乗馬体験などを通じて馬とふれあうことができます。広々とした敷地でのんびりと草を食む馬たちの姿は、非常に牧歌的で癒やされます。周辺には高原地帯が広がり、風力発電の風車が立ち並ぶ風景の中を走るツーリングも気持ちが良いものです。遠野のもう一つの顔である馬との歴史に触れ、のどかな時間を過ごすことができる、穴場的なスポットと言えるでしょう。
道の駅高田松原(陸前高田市)
遠野は「遠野物語」だけでなく、かつては馬産地としても栄えた歴史を持ちます。その文化を今に伝えるのが「遠野馬の里」です。ここでは、かつて農耕や運搬に活躍した南部馬(寒立馬)の系譜を引く馬たちが飼育されており、乗馬体験などを通じて馬とふれあうことができます。広々とした敷地でのんびりと草を食む馬たちの姿は、非常に牧歌的で癒やされます。周辺には高原地帯が広がり、風力発電の風車が立ち並ぶ風景の中を走るツーリングも気持ちが良いものです。遠野のもう一つの顔である馬との歴史に触れ、のどかな時間を過ごすことができる、穴場的なスポットと言えるでしょう。
道の駅高田松原(陸前高田市)
広大で多様な地形を持つ岩手県でのツーリングを安全に楽しむためには、いくつかのポイントがあります。まず、岩手県は面積が非常に広いため、走行距離が予想以上に長くなることがあります。特に山間部や沿岸部ではガソリンスタンドの間隔が長いエリアもあるため、給油は常に早めに行う習慣をつけましょう。
八幡平アスピーテラインなどの山岳道路は、冬季(おおむね11月上旬から4月下旬頃)には積雪のため通行止めになります。訪れる前には必ず最新の道路交通情報を確認してください。夏場でも、山間部は天候が急変しやすく、気温が下がることもあるため、レインウェアや調整しやすい服装の準備は不可欠です。
また、自然豊かな土地ならではの注意点として、野生動物(特にシカ)の飛び出しには常に気を配りましょう。特に早朝や夕暮れ時の山道では、スピードを控えめに、常に周囲に注意を払いながら走行することが大切です。
まとめ
ダイナミックな三陸の海岸線、走りごたえのある山岳ワインディングロード、歴史の重みを感じる世界遺産、そして日本の心のふるさとを思わせる里山の風景。岩手県は、訪れるライダーに尽きることのない感動と発見を与えてくれる、まさにツーリングの宝庫です。
今回ご紹介したスポットは、その魅力のほんの一部に過ぎません。目的地を目指す道中にも、きっと素晴らしい景色や温かい人々との出会いが待っているはずです。しっかりと計画を立て、安全運転を心がけながら、あなただけの岩手ツーリングを満喫してください。みちのくの大地が、最高の思い出と共にあなたを迎えてくれることでしょう。