九州の玄関口であり、アジアへの窓口としても賑わう福岡県。多くの人は活気ある都市や美味しいグルメをイメージするかもしれませんが、バイク乗りにとっては、風光明媚な海岸線、走りごたえのある山道、歴史情緒あふれる街並みなど、多彩な魅力を持つ絶好のツーリングエリアでもあります。玄界灘の潮風を感じる海沿いのルートから、緑深い山々を駆け抜けるワインディング、そして個性豊かな街々を訪ねる旅まで、福岡県にはライダーの冒険心をくすぐるスポットが満載です。今回は、そんな福岡県内から特におすすめしたいツーリングスポットをピックアップし、それぞれの魅力をご紹介します。さあ、ヘルメットを装着し、福岡の素晴らしい道と景色を巡る旅に出発しましょう。
桜井二見ヶ浦(糸島市)
福岡市内からのアクセスも良く、多くのライダーが集まる定番スポットが糸島半島の「桜井二見ヶ浦」です。海岸から約150mの場所に鎮座する夫婦岩と、その間にかけられた大注連縄、そして海に浮かぶ白い鳥居が織りなす風景は、神聖でありながらもフォトジェニック。特に夕暮れ時には、夫婦岩の間に沈む夕日が空と海を美しく染め上げ、息をのむほどの絶景が広がります。「日本の渚百選」「日本の夕陽百選」にも選ばれており、その美しさは折り紙付きです。周辺にはおしゃれなカフェも多く、海を眺めながらの休憩に最適。海岸線を走る県道54号線(サンセットロード)は、潮風を感じながら走れる気持ちの良いルートです。
志賀島(福岡市東区)
本土と砂州「海の中道」で繋がっている陸繋島・志賀島は、手軽に島一周ツーリングを楽しめる人気のエリアです。約10kmほどの周回道路は、信号も少なく、玄界灘の美しい景色を眺めながら気持ちよく走ることができます。歴史好きなら、漢委奴国王印(金印)が発見された場所として知られる「金印公園」は外せません。島の高台にある「潮見公園展望台」からは、博多湾や福岡市街、海の中道などを一望でき、特に夜景スポットとしても人気があります。新鮮な海の幸を味わえる食事処もあり、サザエ丼などが名物。福岡市内から気軽にアクセスできるため、半日程度のショートツーリングにもおすすめです。
平尾台(北九州市)
日本三大カルストの一つに数えられる平尾台は、北九州市に広がる石灰岩の台地です。緑の草原に白い石灰岩が点在する「羊群原(ようぐんばる)」と呼ばれる独特の景観は、まるで異世界に迷い込んだかのよう。台地を貫く道路は適度なアップダウンとカーブがあり、開放的な景色の中を走る爽快なツーリングが楽しめます。点在する鍾乳洞(千仏鍾乳洞、牡鹿鍾乳洞など)を探検したり、展望台からのパノラマを楽しんだりするのも良いでしょう。自然観察センターや休憩施設も整備されています。秋にはススキの穂が金色に輝き、また違った美しさを見せてくれます。
秋月(朝倉市)
「筑前の小京都」と称される秋月は、かつての秋月藩の城下町。しっとりとした風情が漂う歴史的な街並みは、バイクを降りてゆっくり散策するのに最適です。特に約500mにわたって続く「杉の馬場通り」は、春には桜、秋には紅葉のトンネルとなり、多くの観光客を魅了します。通りの両脇には、古い武家屋敷や土塀、苔むした石垣などが残り、タイムスリップしたかのような気分を味わえます。名物の葛料理や葛きり、手打ちそばなどを味わえる食事処やカフェもあります。周辺の山々へ続く道も、自然豊かなツーリングルートとなっています。
英彦山(添田町)
福岡県と大分県の県境に聳える英彦山(ひこさん)は、古くから修験道の霊山として信仰を集めてきた山です。山全体が神聖な雰囲気に包まれており、中腹には英彦山神宮の奉幣殿(国指定重要文化財)があります。麓から奉幣殿まで続く石段の参道は趣がありますが、バイクであればスロープカーを利用するか、周辺の県道などを走りながら山の雰囲気を感じるのが良いでしょう。標高が高いため夏でも比較的涼しく、緑深いワインディングロードは走り応えがあります。山頂付近からの眺望も素晴らしく、達成感を味わえます。歴史と自然の両方を感じられるスポットです。
柳川(柳川市)
「水の都」として知られる柳川市は、市内を縦横に流れる掘割(クリーク)を「どんこ舟」で巡る川下りが有名です。バイクを駐車場に停めて、船頭さんの巧みな竿さばきと語りに耳を傾けながら、水郷の風情を味わうのは格別な体験です。白壁の土蔵や赤レンガの倉庫、季節の花々などが彩る水辺の風景は、心を和ませてくれます。柳川グルメといえば、何といっても「うなぎのせいろ蒸し」。甘辛いタレが染み込んだご飯と香ばしい鰻の組み合わせは絶品です。市内には多くの鰻の名店があり、どこで味わうか迷うのも楽しみの一つです。
門司港レトロ(北九州市)
関門海峡に面した門司港は、明治から昭和初期にかけて国際貿易港として栄えた港町です。その当時の面影を残す歴史的な建造物が数多く保存・活用されているのが「門司港レトロ地区」です。旧門司税関や旧大阪商船、旧門司三井倶楽部といったレトロ建築が立ち並び、異国情緒あふれる街並みを形成しています。関門橋や行き交う船を眺めながらの散策は心地よく、夜にはライトアップされた幻想的な風景も楽しめます。ご当地グルメ「焼きカレー」も人気。関門トンネル(人道は無料、バイクは不可)や関門橋(有料)を渡って、対岸の下関(山口県)へ足を延ばすツーリングプランも可能です。
宮地嶽神社・光の道(福津市)
全国にある宮地嶽神社の総本宮で、開運商売繁盛の神様として信仰を集めています。特に近年注目されているのが、年に2回(2月と10月)、神社の参道から玄界灘に沈む夕日が一直線に照らす「光の道」の絶景です。この時期は多くの人で賑わいますが、それ以外の時期でも、長い石段の上から参道と海を望む景色は素晴らしいものです。境内には日本一の大注連縄や大太鼓、大鈴もあり、見どころ豊富です。周辺には海岸線や松原など、バイクで走って気持ちの良い場所も点在しています。
米ノ山展望台(篠栗町)
福岡市内や近郊から比較的アクセスしやすく、素晴らしい眺望が楽しめるスポットとして人気なのが、篠栗町にある米ノ山(こめのやま)展望台です。若杉山の山頂近くに位置し、昼間は福岡市街地や博多湾、遠くは志賀島まで見渡せるパノラマが広がります。そして、夜には宝石を散りばめたような美しい夜景が眼下に広がり、多くの人が訪れます。展望台までの道はワインディングロードとなっており、走りを楽しむこともできますが、道幅が狭い箇所やカーブも多いため、安全運転を心がけましょう。
油山市民の森・片江展望台(福岡市城南区・早良区)
福岡市中心部から最も近い本格的な自然スポットの一つが油山です。「油山市民の森」として整備されており、キャンプ場やアスレチック、ハイキングコースなどがあります。バイクで手軽にアクセスできる展望スポットとして人気なのが「片江展望台」です。標高は約300mほどですが、福岡市街地、特に南区や城南区方面の夜景を一望できます。駐車場もあり、気軽に立ち寄れるのが魅力。都心近くで自然を感じたい時や、夜景ツーリングにおすすめです。
芥屋の大門(糸島市)
糸島半島の北西端に位置する芥屋(けや)の大門(おおと)は、玄界灘の荒波によって作られた日本最大級の玄武岩洞です。海蝕によってできた洞窟は高さ64m、奥行き90mにも及び、その神秘的な姿は国の天然記念物に指定されています。洞窟内へは芥屋漁港から出航する遊覧船で見学することができます(波の高い日は欠航あり)。周辺の海岸線も美しく、透明度の高い海と奇岩が織りなす景観は一見の価値あり。ツーリングで訪れ、遊覧船に乗って自然の造形美を体感するのも良いでしょう。
まとめ
美しい海岸線が続く糸島や志賀島、開放的なカルスト台地の平尾台、歴史情緒あふれる秋月や柳川、そして活気ある門司港レトロや福岡市内など、福岡県にはライダーを飽きさせない多様なツーリングスポットが溢れています。美味しいご当地グルメも旅の楽しみを一層深めてくれるでしょう。今回ご紹介したスポットはほんの一例です。ぜひ、ご自身のバイクで福岡の道を走り、お気に入りの場所を見つけてください。安全運転を心がけ、思い出に残る素晴らしいツーリングをお楽しみください。